セクハラ・パワハラ保険の販売急増から考える企業の備え
企業内のセクハラやパワハラに備えるハラスメント保険への加入が増えているというニュースがありました。
ハラスメント保険とはどのような保険か、そしてなぜ今注目がされているのか、そこから考えるべき企業の備えについてみていきましょう。
ハラスメント保険とはどんな保険?
ハラスメント保険は、正式には「雇用慣行賠償責任保険」と呼ばれるもので、英語で「Employment Practice Liability Insurance」と言うことからEPLI保険とも呼ばれています。
企業が従業員、元従業員、これから就職予定の採用者などから不当行為で訴えられた場合の損害賠償金や訴訟費用などが支払われます。
つまり、企業が従業員等とのトラブルに備える保険です。
雇用慣行賠償責任保険の補償範囲は保険会社によって異なりますが、一般的には正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトまで及びます。
また、先ほども書いたように現行の従業員だけでなく、元従業員や採用予定者までも範囲に含まれます。
不当行為の範囲も広く、いわゆるパワハラ・セクハラなどのハラスメント行為だけでなく、不当解雇や不当評価、人権侵害なども範囲に含まれます。
そのため、この保険は「セクハラ保険」とか「パワハラ保険」とも呼ばれていますね。
経営者や役員から一般社員に対してのセクハラ・パワハラ行為だけでなく、一般社員からパート、アルバイトに向けてのセクハラ・パワハラ行為も範囲に含まれるため、従業員間でのトラブルに広く対応してくれる保険と言えます。
実際に起きたハラスメントの賠償事例
ハラスメントによる賠償請求の過去の事例は多く存在します。
例えば、管理職の人間がみんなの前で「能力がない」など激しく叱咤して精神的苦痛を訴えた例では、慰謝料200万円が支払われています。
他にも、上司が背中を殴打したり叱責しながら足で蹴るなどの暴力行為や、理不尽な始末書を書かせたとして賠償請求をした従業員は、それぞれ数十万円の慰謝料や治療費が支払われています。
ハラスメントなどの事例については、厚生労働省が「あかるい職場応援団」というサイトを立ち上げいくつか公表をしています。 これを見るだけでも様々な不当行為が存在する事が分かります。
なぜハラスメント保険に加入する企業が増えてるのか
ここ数年、働き方が多様化してきています。
グローバル化やIT化はもちろんのこと、女性の社会進出、国による政策なども要因となっています。
そのため一つの企業でも多様な働き方があったり、様々な国や性別の人が働いていたりします。
一方で、立場が異なれば意見が異なり、衝突する事もあります。
小さな衝突がいつしか大きな問題となる事もあり、その対策として中小~大企業においてハラスメントを対象とした保険への加入が加速しています。
また、セクハラに関してはSNSで「#me too」運動というのが世界に広がりました。 こちらは性的な嫌がらせなどをSNSで告白するときに使用されるハッシュタグのことです。
著名人が使用しはじめて徐々に認知度が高まっていて、昔では表に出てこなかったような問題が今では大きな問題となるケースもあります。
企業が考えるべきセクハラ・パワハラへの備え
訴訟となると費用だけではなく、会社のイメージダウンや利益の減少に繋がる可能性もあります。
また、雇用慣行賠償保険は保険会社によって補償内容は異なりますが、調査費などが支払われるものもあります。 代表や役員が気を付けていても、一般社員がハラスメント行為をしてしまう可能性もあります。
一度問題となると大きな資金や時間が必要となるので、それらに備えておくことは経営の大切なリスクヘッジと言えます。
専門的な分野のため、加入にあたっては企業のリスクマネジメントを専門とする保険代理店に相談してみると良いでしょう。